研修の基本的な考え方
受講者は何らかの知識を持っている
限りある研修時間を有意義に使いたい。
これは、講師も受講者も同じ想いのハズ。
なのに、すでに知っている初学的なことを、開始早々、永遠と聞かされる受講者の気持ちになってみてください。
「この研修、つまらないかも」と思われてしまいます。
そう思われたら最後、「この研修、楽しい!」と思うところまで引き上げるのは容易ではありません。
つまらないと思われてしまう例
ITスキルの研修
「すでにある文字を、別な場所に入力しなおしてください」という場面。
経験のある方はコピーペーストを使えば効率的だと思い、マウスの右クリックで操作するかもしれません。より経験のある方だとショートカットキーで操作するかもしれません。
まったく経験のない方は、入力しなおします。
研修の時間は限られています。
そこで、事前にスライドに、
・右クリックして、メニュー表示してからのコピー・ペーストの方法
・キーボードのCtrlを押しながらCでコピー、Vでペーストの方法
を作り、受講者の方々へ説明したとします。
この時、この研修が「ITリテラシー超入門」などの研修であれば、親切に説明するのも良いです。しかし、「Javaプログラミング入門」など、初学者のレベルは超えている受講者と思われる方々が参加している場合、コピペの説明に時間を割かれると、受講者の多くは「一番、初学者で演習の遅い人にスピードを合わせる、のんびりとした研修なんだな」と思われてしまいます。
この先、どんどん難しい演習をしていただくのに、受講者はのんびり構えてしまい、結果、最後は置いて行かれて、スキルを習得できずに不幸に終わるなんて最悪ですね。
楽しいと思わせる例
そこで、次の作戦を取ります。コピペスライドは作らない。
受講者の演習中の操作に目を凝らします。
コピペを右クリックで行っている人、キーボード操作で行っている人に目をつけます。
演習の発表の際、同じ文字を違う場所に移す場面に受講者に操作方法をレクチャーしてもらうのです。そして、その説明者に賞賛を与えます。例えば、みなさんに「拍手」をしてもらうのも一つの手段ですね。
発表者に選ばれた受講者は、「みんなの前で説明する」という経験が得られます。
操作を知らなかった受講者は、同じスキルを習いに来ている受講者が説明することにより、「みんな同じレベルだと思っていたが違うんだ。がんばろう」と思う方もいらっしゃいます。
すでに知識として知っている受講者は「俺もそれくらいなら知っている」と、次、発表者に選ばれたいと思ってくださいます。
受講者にもともとある「○○の知識」を活用する
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受講者は、これまで社会人として得てきた経験や知識などを持っている。
その既存の経験知識をフル活用して、あらたな学習を積み上げて、講義を組み立てるのです。
つまり、受講者は「何も知らない」ことを前提に講義を始めるのではなく、受講者の持っている既存の知識を活用して、受講者にしてもらえることは、受講者に依頼するのです。一方通行の講義にしない。そのためにも、まずは、受講者が取り組める課題から講義を開始しましょう。
つまらないと思わせてしまう例2
講演を依頼されてスライドをたくさん作る。
当日は、スライドを一枚一枚めくりながら、説明をする。
受講者はうなずきながら聞いている。そうして、講演の時間が終わる。
たくさんの拍手を頂く。
講師の立場からいうと、みなさんの反応「頷きながら聞いている」は、良い反応として捉えがちです。拍手をもらって、満足感もあります。
でも、これでは「教えること」を行ったまでに過ぎません。動画教材と同じです。その場にいる(リアルタイムでいる)理由がないのです。
受講者が、講習で得た知識は、会場を出て30秒で9割が失われます。帰宅するころには、「ノルマ達成」感(参加するノルマ)だけが残り、講演で話した内容は残っていません。「成果をだす」ところまでたどり着けずに終わってしまいます。
楽しいの思わせる例2
では、どのようにすると良かったのか?
スライドをたくさん作る。当日は、スライドを一枚一枚めくる際に、問いかけをするのです。
大勢の受講者に問いかける。だれも答えてくれません。それでいいのです。
受講者の方々は、こころの中で答えてくれています。
そうして、スライドをめくると、その内容を知っている受講者の方々は「ほら、思った通り!」と明るくなります。
知らなかった受講者は「へぇ~、そうなんだ」と内容を受け入れます。
これも既存の知識を活用した研修と言えるのです!
学会などの発表ではない限り、既存の知識を刺激し、それを土台に知識を堆積させ、忘れない記憶へと焼き付ける。そんな方法を取ってみてはいかがでしょうか?
受講者に「すでにある経験・知識」を最大限活用して「新たな学び」を積み上げるのが講師の役目です。
具体例
具体的には、「仕事で集中できなくなったとき、私はこのような方法をとっていました。」とスライドを見せる。
次のスライドを表示する前に、
「ところが、仮眠をとるよりも、ずっと効果的な、かつ、集中力が継続する方法があったんです。みなさん、何だと思いますか?」と問いかける。
5秒程、何も話さず、でも、受講者を見渡して、スライドをめくる。
ほら、この記事を読んでいるあなたも、「その方法なんだろう」と一生懸命目を細めてモザイク越しに文字を読もうとしてしまったでしょう!
「5分の運動」と書いてあります!
問いかけ考えてから回答をだすと、人は自分の考えに○✕を付けたいのです。
このようにして、既存の知識を元にしたクイズを出してみましょう。
注意したいのは、既存の知識を持ち合わせていないクイズです。
講師の独りよがりになってしまいます。
例えば、
「サイバー攻撃で、一番狙われる機器は何でしょう?!」
と張り切って問いかけたところで、受講者のみなさんは、既存の知識がないから「分からない」
そこで、「はい、そーですね。みなさんの考えた通り、ルーターです!」
と講師が張り切って言っても、受講者は「・・・・(シラー)」となりますから、出題レベルには気を付けてくださいね。